初心者の学生さんへの日本語の教え方のコツ|意識している5つのこと
初心者の学生さんに教えるのって難しそう…英語で説明した方がいいのかな?
「初心者の学生さんに日本語をどう教えればいいんだろう?」
始めたばかりのころは迷いますよね。英語を使った方がいいのか、日本語だけで通すのか。間違いは全部直すべきか、流すべきか。
この記事では、私が初心者の学生さんに教えるときに意識している5つのことを、具体的なシーンも交えて解説します。
Ami(フリーランス日本語教師)
海外・オンラインでの日本語教育経験あり。
現在はデンマークから世界中の学習者に日本語を教えています。
これまでに3000回以上のレッスンを担当してきました。
初心者レッスンは一見シンプルそうに見えて、意外と奥が深いんです。
でもコツを押さえると、学生さんの伸びもしっかり実感できます。
私が大切にしている基本をお伝えします。
- 初心者レッスンで英語を使うべきか
- 視覚教材(イラスト・動画)の効果的な使い方
- 教師の日本語をどう調整するか
- つまずきポイントへの向き合い方
- 訂正とわからない時の対応
1. 英語を使わない、日本語で日本語を学ぶ
初心者レッスンで一番大切にしているのは、教師側が英語を使わないことです。
たとえ教師が英語を話せても、日常的に英語を使うのは避けた方がいいと私は感じています。
理由はシンプル。学生さんが英語に頼る癖がついてしまうからです。
一度「難しいことは英語で聞けばいい」と学んでしまうと、日本語で考える力が育ちにくくなります。学習者が日本語を本当に身につけるには、日本語で日本語を理解する環境が一番です。
- 単語はイラストで視覚的に示す
- 例文を使って意味を推測させる
- ジェスチャーや表情をうまく使う
- どうしても必要な時だけ英語を最小限に
どうしても説明が難しい単語は、あらかじめスライドに簡単な英語を入れておくこともあります。ただしそれをするのも、「みんなの日本語」でいうと1〜2課まで。それ以降はできるだけ日本語だけで進めます。
え、初心者なのに日本語だけで教えられるの?
不安になりますよね。でも意外と伝わるんです。
イラストや例文、ジェスチャーを組み合わせれば、英語を使わなくても十分に教えられます。
日本人が日本語を覚えた時も、絵や状況から学んでいるんです。その感覚を再現するイメージです。
教師が英語を使わないことで、学生さんの日本語力は確実に伸びる。
視覚・例文・ジェスチャーを組み合わせれば十分に教えられる。
2. 視覚で教える:イラストと動画の活用
日本語だけで教えるためのカギが、視覚教材です。
私はスライドにイラストをたくさん入れています。単語の意味を英語で訳すのではなく、絵を見せて「これが『りんご』ですよ」と伝える。これが一番記憶に残ります。
- 単語の意味:イラスト(シンプルなものでOK)
- 文化的な概念:YouTube動画
- 動作の説明:写真や短い動画
- 比較・対比:並べて見せる図
特に文化的な概念は、動画の方が圧倒的に伝わりやすいです。
たとえば「節分」という言葉を説明するとき、言葉だけでは伝わりきりません。でもYouTubeで節分の動画を見せると、「豆をまいている!鬼が出てきた!」と一目でわかります。
「そろばん」も同じ。「日本の昔の計算道具」と説明するより、実際に使っている動画を見せる方が、学生さんも楽しんで理解できます。
動画まで使うの大変そう…準備が追いつくかな。
YouTubeなら無料で使えますし、スライドに動画のリンクを貼っておけば大丈夫です。
文化的な言葉が出てきたときだけで十分。
言葉の意味だけでなく、その背景にある文化も伝わるので一石二鳥です。
単語はイラストで、文化はYouTube動画で視覚的に伝える。
視覚で見せることで記憶に残りやすく、日本文化への理解も深まる。
3. 教師の日本語を「学生が習った範囲」に合わせる
意外と見落とされがちですが、教師自身が使う日本語のレベルもとても大切です。
自然な日本語で話しかけるつもりでも、学生さんがまだ習っていない表現を使ってしまうと、それだけで混乱します。
- 学生さんが習った文法の範囲内で話す
- 省略表現を避ける(「んですか」など)
- 丁寧な基本形を使う
- 語彙も学習進度に合わせる
たとえば、N5の学生さんに「これ読めるんですか?」と聞きたいとき。
「〜んですか」という形はN5ではまだ習っていません。なので「読むことができますか?」と習った範囲の表現に置き換えます。
普通に話しかけちゃいそう…そこまで意識するんだね。
最初は難しく感じますが、慣れてくると自然にできるようになります。
教科書を確認しながら「今この学生さんはどこまで習ったか」を意識するだけで、レッスンの理解度がぐっと上がります。
学生さんも「先生の日本語が全部わかる」と自信になりますよ。
教師の日本語も学生の習得範囲に合わせる。
「習ったものだけ使う」ことで学生さんの理解と自信が深まる。
4. つまずきポイントは繰り返しで克服
初心者レッスンで多くの学生さんがつまずくポイントは、だいたい決まっています。
- て形:動詞の変化パターンが複雑
- い形容詞・な形容詞の変化:どちらがどう変わるか混乱する
- 助詞の使い分け:「は」「が」「を」「に」など
- 動詞のグループ分け(1グループ、2グループ、3グループ)
これらは「一度説明したら終わり」ではありません。理屈を教えても、使えるようになるには時間と練習が必要です。
私が意識しているのは、とにかく往復練習を繰り返すこと。
先生が例文を出す → 学生さんが答える → 別の例文 → また答える。この往復を、自然に口から出るようになるまで繰り返します。
同じことを何度もやって、飽きられない?
例文のシチュエーションを変えるだけで全然違います。
「朝起きて」「ご飯を食べて」「学校に行きます」と生活に沿った文を使えば、練習自体が日常会話の練習にもなります。
繰り返しは飽きる練習ではなく、使える日本語を作る時間だと考えています。
つまずきポイントは説明だけでは身につかない。
生活に沿った例文で往復練習を繰り返すことで、使える日本語に変わる。
5. 訂正と「わからない時」の対応
レッスン中、学生さんが間違えたり、わからなくて固まってしまうことはよくあります。そんな時、どう対応するかが学習効果を大きく左右します。
訂正は「今後困る間違い」だけ
毎回すべての間違いを訂正していたら、会話が止まってしまうし、学生さんも落ち込んでしまいます。
私が意識しているのは、「今後も同じ間違いをされたら厄介な間違い」だけ訂正することです。
たとえば、学生さんが「先週友達にカフェに行きました」と言ったら、「あ〜、友達と!」と返します。そうすると学生さんは自然に「そうです、友達と行きました」と言い直してくれます。
直接「間違ってます」と指摘するのではなく、さりげなく正しい形を返すだけで十分です。
わからない時は待つ、そして答えは教えない
学生さんが「わからない」で固まった時、焦って答えを教えるのは逆効果です。
考える時間の長さは人それぞれ。無言で考える学生さん、「えーと…」と声に出す学生さん、いろんなタイプがいます。レッスンを重ねるうちに、その学生さんに必要な「待ち時間」が自然とわかってきます。
しばらく待って答えが出ない時は:
- スライドを前に戻してヒントを見せる
- 似た例文を自分から話してみせる
- 関連する単語を出して連想させる
- それでも難しければ選択肢を出す
絶対にやってはいけないのは、答えをそのまま教えることです。せっかくの学びのチャンスを奪うことになります。
自分で悩んで出した答えの方が、ずっと記憶に残ります。
待つのって勇気いるね…沈黙が気まずく感じちゃう。
わかります、最初は本当にそう感じます。
でも学生さんも考えています。その時間を尊重することが、いい先生の一歩だと思っています。
慣れてくると、その沈黙すら大切な学習時間に感じられるようになりますよ。
訂正は厄介な間違いだけに絞る。
わからない時は待つ、そして答えは教えない。悩んだ末の答えが一番記憶に残る。
まとめ
初心者の学生さんへの教え方のコツを5つにまとめました。
- 英語を使わず、日本語で日本語を教える環境を作る
- 単語はイラスト、文化はYouTube動画で視覚的に伝える
- 教師の日本語も学生さんが習った範囲に合わせる
- つまずきポイントは往復練習で繰り返し定着させる
- 訂正は厄介な間違いだけ、わからない時は待って答えは教えない
初心者レッスンは、教師の関わり方一つで学生さんの伸びが大きく変わります。
「どう話すか」「どう訂正するか」「どう待つか」。その積み重ねが、学生さんの自信と実力につながっていきます。
初心者の学生さんを教えるのは、本当にやりがいのある仕事です。
少しずつ日本語が話せるようになる姿を見られるのは、この仕事の一番の醍醐味だと感じています。
この記事が、同じように教える方の参考になれば嬉しいです。
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