英語なしで日本語を教える私の方法|イラストだけで伝わる理由
英語を使わないで日本語を教えるって、初心者の学生さんには難しくないですか?
私のレッスンは、基本的に日本語だけで進めます。英語の説明はほとんど使いません。最初にそう聞くと「え、本当に伝わるの?」と思われることも多いです。でも実際には、ほとんどの学生さんはちゃんと理解してくれます。その秘密はイラストにあります。
最初は不安そうな学生さんも、2〜3課目には慣れてきて、日本語で考える癖がついてきます。イラストさえあれば、翻訳なしでも意味は伝わるんです。
Ami(フリーランス日本語教師)
海外・オンラインでの日本語教育経験あり。
現在はデンマークから世界中の学習者に日本語を教えています。
これまでに3000回以上のレッスンを担当してきました。
・英語を使わないと決めた理由
・イラストで意味が伝わる仕組み
・スライドを使ったレッスンの実際の流れ
・みんなの日本語との組み合わせ方
1. 英語を使わないと決めた理由
実は、英語なしを徹底しようと決めたのは5〜6課あたりのことでした。あるとき、私が英語を理解できるとわかった学生さんが、突然英語でペラペラと話し始めたんです。話の内容はとても面白くて、会話も弾む。でも、それは日本語のレッスンではありませんでした。
その経験から、「英語に逃げ道を作らないこと」が大切だと気づきました。英語を使い始めると、学生さんは「わからなければ英語で教えてもらえる」という前提でレッスンに来るようになります。困ったときにすぐ英語に逃げる習慣がついてしまい、自分で考えることをやめてしまうんです。
日本語だけの環境を意図的に作ることで、学生さんは文脈やイメージから自分で意味を推測しようとします。その力こそが、実際に日本に来たときや日本語のメディアを楽しむときに活きてくる力です。私の学生さんの90%は実際に日本に来たことがあります。日本語だけの環境に慣れておくことは、リアルな日本での体験に直結します。
ただし、最初の1〜2課だけは少し例外です。まったくゼロの状態から始める学生さんには、最初だけ少し英語でサポートすることもあります。でも3課目以降は基本的に日本語のみ。この切り替えが大切です。
自分が学習者の立場になると、なぜ母語に頼りたくなるのかがよくわかります。英語や他の言語を1から学んでみると、学生さんの気持ちが実感でき、教え方の改善にもつながります。
2. イラストで伝わる理由
「英語なしで、なぜ伝わるのか」——答えはシンプルです。人は言葉の意味がわからなくても、絵やイメージから直感的に意味をつかめるからです。
たとえば「疲れました」という表現を教えるとき、ぐったりした人のイラストを見せれば、英語で “I’m tired” と説明しなくても、ほとんどの学生さんはすぐに意味を理解します。
英語で翻訳してしまうと、頭の中に「疲れた=tired」という対訳の回路ができてしまいます。でもイラストで覚えると「疲れた=このイメージ」という直接の結びつきが生まれます。これが日本語を日本語として理解する力、つまり日本語で考える力につながっていくんです。
特に効果を感じるのが「〜てあげる/もらう/くれる」のような、方向性のある表現です。誰から誰へ、という関係をイラストで矢印で示すだけで、英語でどれだけ説明しても伝わりにくかったニュアンスがスッと入ってくる。
最初は答えられなくて「んーー」と詰まっていた学生さんが、イラストや私の表情、ジェスチャーでヒントをもらった瞬間に「あ!!」と表情が変わる。その「思い出せた!やった!」みたいな顔が、私はとても好きです。
赤ちゃんが言語を覚えるプロセスに似ていますよね。「りんご」を初めて覚えるとき、英語訳で覚えるんじゃなくて、りんごそのものを見て覚える。それと同じ感覚です。
3. スライドを使ったレッスンの流れ
私のレッスンは「みんなの日本語」を使っていますが、教科書をそのまま最初から読み進めるわけではありません。メインはオリジナルのスライドです。
新しい文法が出るときは、スライドにイラストを入れて、日本語だけで説明します。「これは何ですか?」「どんなときに使いますか?」という問いかけを繰り返しながら、学生さん自身に考えてもらう時間を大切にしています。スライドで文型のイメージが定着したら、教科書のB練習・C練習をアウトプット用に使います(みんなの日本語では、B練習が文型の置き換え練習、C練習が会話形式の応用練習です)。声に出して練習することで、知識が体に入っていく感覚があります。
1課が終わったら宿題ページを自分でやってもらい、次のレッスンで写真を送ってもらって一緒に確認します。宿題は「復習」として位置づけていて、どこまで定着しているかを確かめる場にもなっています。
① 新文法 → オリジナルスライド(イラスト+日本語のみで説明)
② アウトプット → 教科書のB練習・C練習
③ 宿題 → 1課終了後に自分で取り組む
④ 次回レッスン → 宿題の写真を送ってもらい一緒に確認
4. みんなの日本語との相性がいい理由
みんなの日本語を選んでいる理由のひとつが、「イラスト教授法との相性の良さ」です。文型の積み上げ方が丁寧で、新しい文法が少しずつ追加されていく設計になっています。1文型ごとにイラストをあてやすく、視覚的な説明がしやすいんです。
一方で、不満もあります。教科書が古く、電子辞書など今の学生さんには馴染みのない語彙が出てきます。そういうときは「昔ありましたね!今は使いませんね!笑」とサラッと流します。私の学生さんは年齢が近いか上の方が多いので、だいたい通じるんです。イラストもモノクロで古いデザインです。だから私はオリジナルスライドを作って、現代的な語彙やイメージに置き換えています。全課のスライドを最初に作り切ってしまえば、あとは使い回しができます。毎回のレッスン準備にかける時間はほぼゼロ。初期投資さえすれば、長期的にとても効率よく教えられる仕組みです。
教科書は「骨格」として使って、肉付けはスライドでやるイメージです。みんなの日本語の構成はそのままに、中身を今の時代に合わせてアップデートしています。
まとめ
英語なしで教えるのは、難しそうに見えてシンプルな仕組みです。イラストで視覚的にイメージを作れば、翻訳なしでも意味は伝わります。英語依存を防ぎ、日本語で考える力を最初から育てることが、私がこの方法を続けている一番の理由です。みんなの日本語の丁寧な構成を骨格にしつつ、オリジナルスライドで現代的にアップデートする。この組み合わせが、私の授業の軸になっています。
・英語依存を防ぐため、意図的に日本語だけの環境を作る
・イラストで視覚的なイメージを作ることで、英語なしでも意味が伝わる
・スライド(説明)→教科書練習(アウトプット)→宿題確認、の順でレッスンを進める
・みんなの日本語の構成を骨格に、オリジナルスライドで現代的な内容にアップデートする
最初は「英語なしで本当に伝わるの?」と不安になる方も多いです。でも、イラストを使い始めると学生さんの理解が早くなって、自分の教え方への自信も変わってきます。ぜひ一歩踏み出してみてください!



